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裁判離婚の場合、次の通り、裁判所が、父母の「双方又は一方」を親権者と定めることになります。
「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。」
それでは、裁判所は、いったい、どのような基準で、共同親権にするか単独親権にするかを判断するのでしょうか?
新民法は、次の通り定めています。(ここは非常に重要なところですので、少し長文になりますが、新民法の条文をそのまま引用しておきます。 )
「裁判所は、第二項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。
一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。」
(傍線は弁護士下迫田浩司が引きました。)
少し分かりにくい構造の条文のためか、インターネット上では不正確な説明や混乱が見られますが、整理すると次のようになります。
Ⅰ 裁判所が共同親権にするか単独親権にするかを判断する基準
裁判所は、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。
Ⅱ (例外的に)裁判所が単独親権の指定を義務付けられる場合
「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」
例示として、次の場合。
① 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。
② 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
上記のⅡ→Ⅰの順に見ていったほうが分かりやすいと思います。
まず、「共同親権とすることにより子の利益を害すると認められるとき」には、裁判所は必ず単独親権としなければなりません。
共同親権とすることにより子の利益の害する場合の「例示」として、
①子の心身に害悪を及ぼすおそれ、
②父母が共同して親権を行うことが困難(DV等の事情を考慮)
ということが挙げられていますが、これらはあくまでも「例示」に過ぎず、これらに限定されるわけではありません。
以上の通り「共同親権とすることにより子の利益を害すると認められるとき」には、裁判所は単独親権の指定を義務付けられます。
次に「共同親権とすることにより子の利益を害すると認められるとき」に当たらない場合は、どうなるでしょうか?
この場合、原則として共同親権になるという誤解も見受けられますが、それは完全に誤解です。
共同親権が原則ではないですし、単独親権が原則でもありません。
「子の利益のため」という観点から、親子関係、父母関係その他一切の事情を考慮して、裁判所が決めます(判断基準は「子の利益」です)。
以上のことを整理すると、次の通りとなります。
共同親権とすることにより 子の利益を害すると認められるとき (例示として①②) |
⇒ | 必ず単独親権 |
上記以外のとき | ⇒ | 「子の利益」の観点から、 共同親権か単独親権か決める |
「子の利益のため、一切の事情を考慮」とか「子の利益を害すると認められるとき」などというのは非常に抽象的な概念ですので、裁判所の運用次第で大きく結果が変わるものです。
裁判所の適切な運用が期待されるところですが、裁判所がすべき業務が大幅に増えそうです。しかし、そのために人員が増やされる予定はありません。ただでさえ人員不足で業務過多状態の家庭裁判所に、この役割が果たせるのか、大変心配されるところです。