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公開日:2024年4月30日 最新更新日:2026年4月12日
離婚後の共同親権の導入を含む「民法等の一部を改正する法律」が、2026年4月1日から施行されました。
この「民法等の一部を改正する法律」の主要部分について、解説いたします。
ここでは、「民法等の一部を改正する法律」を「改正法」、改正前の民法の条文を「旧民法」、改正後の民法の条文を「新民法」と呼ぶことにします。
父母が、親権の有無にかかわらず、子の人格を尊重する責務や、子を養育する責務や、子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養する責務を負うことが定められました(新民法817条の12第1項)。
また、父母が、婚姻関係の有無にかかわらず、子の利益のため、互いに人格を尊重し協力する責務が定められました(新民法817条の12第2項)。
離婚後の共同親権については、
「親権者の定め方(どういう場合に共同親権になるか)」に関する話と
「共同親権の行使方法(共同親権になった場合にどうなるか)」に関する話を
分けて理解することが大切です。
まず、前者について解説します。
協議離婚の場合、次の通り、父母(夫婦)の話し合いにより、その「双方又は一方」を親権者と定めることになります。
新民法819条1項
「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。」
なお、従来は、親権者(単独親権者)を定めないと離婚できませんでしたが、新民法では、親権者(共同親権者または単独親権者)を定めないまま、親権者の指定を求める家事審判または家事調停の申立てをしたうえで、離婚だけすることができるようになります(新民法765条1項2号)。
この場合、家事審判では、次の裁判離婚の場合と同じ基準で、裁判所が親権者を定めます。
裁判離婚の場合、次の通り、裁判所が、父母の「双方又は一方」を親権者と定めることになります。
新民法819条2項
「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。」
それでは、裁判所は、いったい、どのような基準で、共同親権にするか単独親権にするかを判断するのでしょうか?
新民法819条7項によれば、おおむね次の通りです。
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まず、「共同親権とすることにより子の利益を害すると認められるとき」には、裁判所は必ず単独親権としなければなりません。
共同親権とすることにより子の利益の害する場合の「例示」として、
①子の心身に害悪を及ぼすおそれ、
②父母が共同して親権を行うことが困難(心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮)
ということが挙げられていますが、これらはあくまでも「例示」に過ぎず、これらに限定されるわけではありません。
以上の通り「共同親権とすることにより子の利益を害すると認められるとき」には、裁判所は単独親権の指定を義務付けられます。
次に「共同親権とすることにより子の利益を害すると認められるとき」に当たらない場合は、どうなるでしょうか?
この場合、原則として共同親権になるという誤解も見受けられますが、それは完全に誤解です。
共同親権が原則ではないですし、単独親権が原則でもありません。
「子の利益のため」という観点から、親子関係、父母関係その他一切の事情を考慮して、裁判所が決めます(判断基準は「子の利益」です)。
詳しい説明については、次のリンクをクリックしてください。
裁判所が共同親権か単独親権かを判断する基準について、詳しくはこちら
親権者の変更についても、改正されました。
旧民法では、「母単独親権→父単独親権」と「父単独親権→母単独親権」の2つのパターンしかありませんでした。
新民法では、次の6つのパターンの親権者変更がありえます。
① 母単独親権→父単独親権
② 父単独親権→母単独親権
③ 母単独親権→共同親権
④ 父単独親権→共同親権
⑤ 共同親権→母単独親権
⑥ 共同親権→父単独親権
親権者変更の審判における裁判所の判断基準についても、基本的に、これから新たに親権者を定める場合の上述した基準があてはまりますが、それに加えて、父母の協議により定められた親権者を変更することが子の利益のため必要であるか否かを判断するに当たっては、「当該協議の経過、その後の事情の変更その他の事情を考慮するものとする」との明文が設けられました(新民法819条8項前段)。
「当該協議の経過」を考慮すべきとされたのは、たとえば、離婚前の父母間に一方からの暴力等があり、対等な立場での合意形成が困難であったといったケースなどで、離婚後にその定めを是正することができるようにする趣旨です。
そして、「当該協議の経過」を考慮するに当たっては、父母の一方から他の一方への暴力等の有無や調停の有無や協議の結果についての公正証書の作成の有無などをも勘案するものとされました(新民法819条8項後段)。
調停や公正証書で親権者を決めた場合には、協議の経過に問題がなかったものと見られやすくなると思われますので、調停や公正証書で親権者を決める場合には、特に注意が必要となりそうです。
上記の「Ⅰ 親権者の定め方(どういう場合に共同親権になるか)」の結果、共同親権になった場合には、次に「Ⅱ 共同親権の行使方法(共同親権になった場合にどうなるか)」が問題となります。
そこで、次に、Ⅱについて解説します。
共同親権となったときも、「子の利益のため急迫の事情があるとき」と「監護及び教育に関する日常の行為」については、親権の行使を単独ですることができます(新民法824条の2第1項3号、第2項)。
「日常の行為」に当たる例・当たらない例として、法務省は、次のような場合を挙げています。

「日常の行為」に当たらないものについても、「急迫の事情」があるときは、父母の一方が単独で親権を行うことができます。「急迫の事情」がある例として、法務省は、次のような場合を挙げています。

共同親権の行使方法(共同親権になった場合にどうなるか)について詳しくはこちら
共同親権の場合における親権の行使方法について、父母の意見が対立した場合に対応するため、改正法は、「親権行使者の指定」という新たな制度を設けました(新民法824条の2第3項)。
この「親権行使者の指定」というのは、親権者そのものを父母のいずれかに指定するわけではなく、「特定の事項」についてのみ親権行使者を指定するものです。
家庭裁判所に「親権行使者の指定の申立て」をして、家庭裁判所は、①特定の事項に係る親権の行使について父母間に協議が調わない場合であって、②子の利益のため必要があると認めるときは、当該事項に係る親権行使者を指定することができます。
改正法は、離婚後の子どもの監護に関するルールについても、明確化しました。
離婚するとき、子どもの監護の分担についての定めをすることができるようになりました(新民法766条1項)。法律では、「子の監護の分掌」という言葉を使っています。
たとえば、次のような定めが考えられます。
● 平日は父母の一方が子どもの監護を担当し、土日祝日は他方が担当するといった定め
● 子どもの教育に関する決定は同居親に委ねるが、その他の重要な事項については父母が話し合って決めることとするといった定め
離婚後共同親権とした場合であっても、その一方を「監護者」と定めることができます(新民法766条1項)。
この場合、「監護者」は、日常の行為に限らず、子どもの監護教育や居所の指定や営業の許可などを、単独ですることができます(新民法824条の3第1項)。
「監護者」でない親権者は、監護者による監護等を妨害してはいけません(新民法824条の3第2項)。
調停調書や審判書や公正証書がなくても、父母間で養育費を取り決めた文書によって、一定の金額(子の数に応じて法務省令で定める金額)の範囲内で「先取特権」が付与されることになりました(新民法306条3号、308条の2)。
「先取特権」というのは分かりにくい言葉ですが、養育費を支払わない別居親の給料などを差し押さえることができます。
★ その後、2025年12月12日に制定された「民法第308条の2の規定による子の監護費用の先取特権に係る額の算定等に関する省令」(令和7年法務省令第56号)1条により、「月額8万円に子の数を乗じて得た額」の範囲内で先取特権が付与されることになりました。
養育費を取り決めていなくても、子の数に応じて法務省令で定める金額の養育費(子の監護の費用)を請求できるようになりました(新民法766条の3)。
★ その後、2025年12月12日に制定された「民法第308条の2の規定による子の監護費用の先取特権に係る額の算定等に関する省令」(令和7年法務省令第56号)2条により、法定養育費の額は「月額2万円に子の数を乗じて得た額」となりました。
たとえば、子ども(1人のみ)の養育費を定めずに2026年4月16日に離婚して、離婚のときから引き続き、子どもの監護を主として行う母(元妻)が、父(元夫)を相手方として、7月中旬ころ離婚調停を申し立て、11月15日に養育費調停が成立した(または審判が確定した)ケース(調停・審判で定めた養育費の月額を10万円とします)について、図示します。

別居後、まだ離婚をしていない段階について、親子交流に関する規定を明確化しました(新民法817条の13)。
家庭裁判所が、家事審判等の手続中に、親子交流の状況等をその後の調整や判断の資料とすることを目的として、事実の調査のため、当事者に対し親子交流の試行的実施を促すことができる仕組みを設けました(新家事事件手続法152条の3等)。
従来は、面会交流とは、法的には、子と別居親との面会交流を指していましたが、新民法では、子の利益のために特別の必要があると認められる場合は、別居親の親や兄弟姉妹などとの交流も含まれるようになります(新民法766条の2)。
ところで、新民法が施行された後は、「面会交流」の代わりに「親子交流」という言葉が用いられることになりそうです。この点に興味がある方は、次のコラムをお読みください。
従来は、財産分与が離婚後2年以内に手続きをしないと、請求できなくなりましたが、新民法では、5年に延長されます(改正民法768条2項ただし書)。
未成年の子どもが養子になった場合に誰が親権者になるかについてのルールが明確化されました(新民法818条3項)。
・未成年の子どもが養子になった場合、養親がその子どもの親権者となり、実親は親権を失います。
・複数回の養子縁組がされた場合には、最後に養子縁組をした養親のみが親権者となります。
・ただ、いわゆる「連れ子養子」(離婚した実父母の一方の再婚相手を養親とする養子縁組)の場合には、養親(再婚相手)とその配偶者である実親が親権者となります。
・「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と規定していた旧民法754条は、削除されました。
・旧民法では「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」が離婚原因の一つとされていました(旧民法770条1項4号)が、削除されました。
2024年2月15日、法制審議会において、離婚後の共同親権の導入を柱とする「家族法制の見直しに関する要綱案」が採択され、同年3月8日、「民法等の一部を改正する法律案」の閣議決定を経て、衆議院法務委員会において、同年4月12日、改正案附則16条以下に17条から19条を加える修正をしたうえ可決され、同月16日、衆議院本会議において、同法律案が可決され、参議院に送付されました。
2024年4月25日から参議院法務委員会で審議が始まり、2024年5月16日、参議院法務委員会で可決され、同年5月17日、参議院本会議で可決され、「民法等の一部を改正する法律」が成立しました。
種々の問題点を含んだ法案でしたので、国会において慎重な審議が望まれるところでしたが、かなり拙速に可決されてしまいました。
2024年5月17日に成立した「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)」についての様々な公的情報については、次の法務省のウェブページをご覧ください。
法務省:民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について〔令和8年4月1日施行〕 (moj.go.jp)
離婚後の共同親権の導入を含む「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)」については、数多くの文献が出版されていますが、施行後の実務において裁判官等の実務家が参照すると思われる重要文献は、次の通りです。
・法務省民事局民事第二課長 北村治樹編著『一問一答 令和6年民法等改正 -家族法制の見直し(親権・養育費・親子交流等)』(商事法務、2025年)
※ 法務省民事局の立案担当者による解説です。
・東京改正家族法研究会「改正家族法の要点と解説Ⅰ」『家庭の法と裁判 2025年10月 第58号』4頁~
・東京改正家族法研究会「改正家族法の要点と解説Ⅱ」『家庭の法と裁判 2025年12月 第59号』27頁~
・東京改正家族法研究会「改正家族法の要点と解説Ⅲ」『家庭の法と裁判 2026年2月 第60号』76頁~
※ 東京家庭裁判所判事らによる解説です。
・父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議「Q&A形式の解説資料(民法編)」(令和8年1月14日改訂)
・父母の離婚後の子の養育に関する民法等改正法の施行準備のための関係府省庁等連絡会議「Q&A形式の解説資料(行政手続・支援編)」(令和8年1月14日改訂)
※ 上記法務省ウェブページに掲載されています。
本ウェブサイトにおける記述も、主として、「民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)」の条文及び上記重要文献に基づいて、弁護士下迫田浩司が執筆しております。